第5回公演(2005年8月)
「百割創造の物語」
■作・演出■
近藤ちこ
■主なキャスト■
太陽 | ; | けみぞー |
翠 | ; | 鈴木れい子 |
飛雄吾 | ; | 安齋洋行 |
さくら | ; | まこ |
ユリ | ; | 白井文 |
紅葉 | ; | 葉々 |
総 | ; | 桐村進 |
天 | ; | 山田みゆき |
稔 | ; | 魔麻 |
役人/軍人 | ; | ハヤト |
軍人 | ; | 中林恵子 |
■日 時■
2005年8月13日(土)15時/19時 14日(日)15時
■会 場■
市川市市民会館ホール(千葉県市川市八幡)
■動 員■
約150人(3回公演合計)
とある国。 この国には、かつて、戦争があったらしい。 祖父の形見である抽象画を、太陽はなんだか好きになれない。 祖母がしてくれる戦争の話も、戦争を知らない彼ら世代には遠い遠い昔話。 しかし、祖父の絵の秘密や祖母の昔話を聞いていくうちに、 太陽は漠然とした不安に襲われるようになる。 ぼくらの国はとても平和だ。 そう信じているのに・・・ 物語は、ある日突然、物事が起こるようになっている。 遠い国のおとぎ話のように描かれた、しかし実はとても身近なテーマ。 戦後60周年の節目の年に、真剣に世界と自分に向き合った第5回公演。 |
- オープニング - 祖父の遺した絵を持ち、語る太陽(たいよう)。 「僕は、印象派の絵は好きではない・・・ なぜ祖父がこんなぼやけた絵を描いたのか、 わけを知ったのは後になってからだった。 (太陽)」 「これは物語。 僕はその物語の登場人物。(太陽)」 |
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- 一場 平和な天の国 - 「お兄ちゃん、もう、早くぅ!つまらなーい!(桜)」 「今度のコンクールで優勝したら、 もうお前にはモデルは頼まないよ(太陽)」 などと言い合いながらも、太陽と桜(さくら)の兄妹は 仲良しだ。 コンクールに出展するため、太陽は妹をモデルにして 絵を描いているのである。 「今日もいい天気だね!(桜)」 ぼくらの国は平和だ。 |
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そこへやってきた太陽の親友・飛遊吾(ひゅうご)と その恋人・ユリ。 舞台役者である彼らは、太陽と桜の祖母・翠(みどり) から聞いた話をもとにした舞台を上演するので ぜひ観に来て欲しいと兄妹を誘う。 "天"と呼ばれる、この国の象徴が一番偉かった時代の話だという。 |
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- 二場 劇中劇- 昔。 飛遊吾演じる画家の力(りき・太陽の祖父) のもとに、"レドー"と呼ばれる赤い手紙が届いた。 この手紙が届いた人間は、 戦場へ行かなくてはならないのである。 恋人・葵(あおい)との最後の逢瀬。 戦場へ行く前に、葵の笑顔を描き残したいのだと 力は言う。 「なぜ貴方が行かなくてはならないの?(葵)」 レドーには逆らえない。国の命令なのだ。 この時代、お国のため、"天"のために、 若者たちは戦場へ向かったのだった。 果たせないと分かっている約束をし、力は旅立つ。 「必ず戻ってくるよ・・・そうしたら、結婚しよう。(力)」 |
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戦いが起きているのは戦場の最前線だけではない。 残された葵にも、戦火は容赦なく降りかかる。 空襲で人々が逃げ惑う中、葵は 力から約束の証にと受け取った絵を取りに行ったまま 還らぬ人となってしまう。 |
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- 三場・楽屋 - 飛遊吾とユリの舞台終了後。 控え室で感想を語り合う太陽一家と飛遊吾、ユリ。 「あれってお祖父ちゃんの話? あのあとにお祖母ちゃんと知りあったんだ〜。 結婚まで約束した女の人がいただなんて、 私だったら嫌だなー。(桜)」 「あの頃は、こんなこと珍しくなかったんだよ。(翠)」 家族が楽しげに話す一方、 太陽は不機嫌な態度で、疑問を投げかける。 「"お国のため"って、なんで?」 「なんで良く知りもしない"天"のために、 死ななきゃならないんだよ。」 |
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「でもあの頃はそうだった。 今だって、あるかもしれない。(翠)」 「あるわけないじゃないか! なんで祖母ちゃんはいつもそういうこと言うの? (太陽)」 「お前は、知っているから怖いんだよ。 よく話をしてやったからな。(翠)」 戦争なんて、昔話。今では考えられない。 しばしば翠から話を聞かされてはいたものの、 やはり受け止められず戸惑う太陽は、 翠、家族、舞台を上演した飛遊吾やユリにまで その気持ちをぶつけるのだった。 |
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それからしばらくたって、翠が死んだ。 翠の昔話を聞かされることはもうなくなった太陽だったが・・ 「余りにも、この国のことを知らないからかもしれない。 たまに、目に見えない不安に襲われる。 でも、本当に、漠然と。(太陽)」 これは物語。 物語とは、ある日突然物事が起こるようになっている。 この物語も例外ではない。 |
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- 三場・花見 - 桜は、外国"統の国"から来た友人・稔(みのり)と一緒に花見に来た。 「今年もいっぱい咲いたのよ!去年より綺麗みたい!(桜)」 楽しい花見のはずが・・・ |
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一転、稔が突然、何者かに射殺されてしまう。 「稔ちゃん!?稔ちゃん!!!(桜)」 |
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その頃。 国のトップである"総"から、国民へ通達が下される。 「国の皆さん、我々は"領の国"に賛同し、 "統の国"と戦うことにしました。 我々の平和な国を守りましょう!!(総)」 |
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「戦争に意味はない。(天)」 かつてこの国を治めていた"天"は、 かつての戦争の後、国の"象徴"となっていた。 国を動かす実権は、国民から選ばれた"総"にある。 過去の過ちから、"天"は"総"に異を唱える・・ 「意味はなくとも、必要があります。(総)」 「貴方様はこの国の象徴ではありますが、 私は総であります。(総)」 「代表です。貴方とは違います。(総)」 この国は、再び戦争への道を歩み始めた。 |
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- 四場 誰も興味がなかったから - 「なんでこんなことになってしまったんだろうな。 (飛遊吾)」 戦争を始めるという通達は、当然、 太陽と飛遊吾の耳にも入っていた。 そして二人は、あの赤い手紙"レドー"の対象である。 しかし・・・ 「実感がない。(飛遊吾)」 「この国が漠然と好きだけど、 だからって何をするわけでもなかった。 だからこんなことになってしまったんじゃないか って思うんだ。(太陽)」 「この戦争は、総の判断だよ。 総の判断と、俺たちが漠然としてることと、 何の関係があるのさ。(飛遊吾)」 あの舞台以来、ずっとこの国のことを考えていた 太陽は、何かに気づき始めていた。 「お前、行ったことがあるか?(太陽)」 |
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桜が統の国の友達と出かけたまま戻ってこない。 母親から聞かされた太陽と飛遊吾は桜を探しに行く。 しかしそこで見たものは、稔の遺体と、 友人の突然の死に泣き叫ぶ桜の姿だった。 この国が統の国と戦争を始めるらしいという話を 桜に告げる太陽。 「お兄ちゃんたちも行っちゃうの!? 私も一緒に行く!!(桜)」 「桜、落ち着けよ!母さんと一緒に居てやれよ! (太陽)」 |
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「・・・これか。(太陽)」 太陽は気づく。 かつて、天のためと言って戦争で命を落とした若者たち。 「国のため」、確かにそれもあったかもしれないが 彼らは、自分の大切な人たちを守るために 戦いへ向かったのではないだろうか。 翠の話を思い出す太陽。 力と葵の物語は、この国の東で起こった話だったこと。 西には、もっと別の物語があったこと。 「この世のものすべてがなくなったかと思うほどの、 大きな光。(翠)」 |
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当時、翠は西にいた。 翠は、光や風の直撃は免れたものの、 汚染された空気を体内に取り込んでしまっていたのだ。 太陽の父親の病死の原因は、翠の体に残ったそれが 原因だったという。 過去の事実、そして、 太陽たちにもできることがあるということを、翠は語る。 「でもばあちゃん、俺はどうしたらいいのか わからないよ。(太陽)」 「考えてごらん、何ができるのか。(翠)」 |
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しかし、一旦始まってしまった国の動きは止まらない。 ついに、出兵の時が近づく。 かつてこの国の歌として歌われていた歌。 その歌の意味を翠はこう語る。 「私の恋人と、 小さな石が集まって岩にまでなり、 その岩に苔が生えるまで、 ずーっと一緒に居られますように。」 - 君が代は、千代に八千代に、 細石の巌となりて、苔の生すまで - |
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「万歳、万歳、バンザーイ!!!(総)」 |
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「ばあちゃん、もう出発するみたいだよ。(太陽)」 「大丈夫だよ、太陽。誰も苦しまずに、戦争は終わるよ。(翠)」 「苦しまずに?(太陽)」 |
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お 前 た ち の 時 代 は 、 二 つ で 終 わ ら な い - この次戦争が起これば、必ずこれが現れる - |
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「嫌だ!!!(太陽)」 出来ることとはいったい何なのか。果たして太陽の決断は。 太陽に問うと同時に、観客に、演者に、問いかける。 「これは物語。だから、書き直せる。これは、物語。(太陽)」 - これは、物語。 - - ? - |
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壮大なテーマを扱った今回の物語。 いかがでしたか? 最後はいつも通り、笑顔でお疲れ様でした!! |
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